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第15号 MBAに学ぶ(中編)

史上最大のイタズラ

そこまで「苦労」して「時間」を創るというのもヘンな話だが、イギリス人達はそういった時間をイタズラ(Black Humor)に注ぎ込んでいた。その労力たるや膨大なものだ。

2学期が始まってしばらく経ったある朝、全員のメールフォルダーに茶色の封筒が配られていた。全て本人の名前入りで、差出人は教務課。

開けてみるとなんと1学期の成績表だ!


初めて出た成績に学生は騒然となり、盛り上がる。思いの外良かった成績に歓声が上がる。逆に自信満々だった学生の一人は、余りに酷い成績に青ざめ、教務課に抗議に走る。

悲喜こもごも、学校のロビーは数時間の間、その話題で持ちきりだ。


そう、これが全てイタズラだったのだ。


結局、成績表偽装団の実態は明らかにならなかったが、首謀者はイギリス人、ということだけは衆目の一致するところだった。

数百名分の学生名簿を打ち込み、一人ずつの成績表を作り、印刷して封筒に入れ、宛名のシールを貼って、夜中にこっそりメールフォルダーに1つ1つ投函し、そして朝になるのをじっと待つ。

そして学生達の悲鳴や嬌声に、エクスタシーを感じていたのだろう。


あるイギリス人の友人は言っていた。

「基本的にイギリスはここ200年下り坂で復活も覚束ない」「だからあるのは自虐と諧謔だけ。これは誰にも負けない」

確かにBlack Humorに掛ける情熱は、天下一品だ。


結局、必要は発明の母と言うことだろうか。やりたいことが他にあれば、頑張って時間も作る。それがなければ勉強し働くことが主体になる。それだけの差なのかもしれない。

今後の人口減少の中で、日本人も自虐と諧謔の虜になるのであろうか。それも良いだろう。ただ、少なくとも無趣味で寡黙な存在にだけはならぬよう、気をつけることとしよう。

初出:CAREERINQ. 2006/03/31

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