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第19号 ビジネス誌・紙は縦・横に読む(縦編)

本当の問い「なぜバンダイ化が難しかったのか」

そもそも彼自身が「肯定的な記事」の中で最初から言っている。

タカラはまだまだ足りない。バンダイのような(ガンダム等古いキャラクターで色々な収益を長期に生み出す)形になっていない、と。


そこには彼の正しい自己認識があり、結果の半分はそこでの戦略・実行の不十分さにあった。これを後から「戦略の認識違い」と言うのは誤りだ。考えるべきは「なぜ(目指したにも拘わらず)バンダイ化が難しかったのか」という問題だ。


また最初絶賛されて後に失敗の象徴とされたQカーにおいても、戦略というよりはやり方の問題と言える。

販売台数は約1年で400台に達し、消費者向け電気自動車(原付き四輪部門)としては日本一売れた。例えそこで収益が上がらなかったとしても、そもそもがチョロQ事業の象徴的存在であり、チョロQ自体のブランド復権に大きく貢献したという点で十分であろう。

問題はそこに資源や資産を注ぎ込みすぎたことであろう。チョロキューモーターズという会社を作り、自動車部品会社を買収し(1億円)、更には国内に8つしかない公認のレースコースを買収した(2.3億円、入場者減で赤字が年5千万円)。そうではなく、あくまでサブの位置づけとして変動費化し、もっと撤退しやすい形にしておくべきであった。

これまた「撤退したから失敗」とか「電気自動車なんてムリだった」と言うことも誤りだ。


最終的な合併という戦略も、よりヒット商品が読めないリスクの高い事業環境下においては必然性の高いものであった。これはタカラとしての収益が多少良かろうが悪かろうが、行うべき意思決定の1つであったように思う。


繰り返すがこれは決して日経ビジネスを初めとするビジネス誌の否定ではない。日経ビジネスは素晴らしい雑誌だし、他のビジネス誌も良い記事が多い。

しかしながら、大きな流れや本質、特に自社にとっての意味合い(インサイト)を見抜くのは、所詮読者である我々の読み方次第だよ、ということだ。

キーナンバー式読解術

もう一つの読み方を挙げよう。これは縦は縦でも、記事を時系列にと言うことではなくて、問題意識に合うものをピンポイントに、という形のものだ。


問題意識として一例を挙げよう。

企業の基本的戦略といわれるものの中で、ポジション別というものがある。リーダー戦略、チャレンジャー戦略、フォロワー戦略、ニッチャー戦略、の4つだ。リーダー戦略というものが示すように、ある分野でナンバー1になることは非常に価値がある。

顧客や取引先から最初に声をかけて貰える、メディアに優先的に取りあえげて貰える、社員の意識が高まる、なによりブランドイメージが上がる。

ただ、そこに定量的な裏付けは少ない。本当に一番になったら、どれ程の売上インパクや収益向上があるのだろうか。実際、定量化は極めて難しい。


そういう実例をコンサルタントは常に求めているわけだがそういうある日、日経流通新聞をつらつら一面から読んでいると、ある数字が飛び込んでくる。

「No.1だと2倍」

これは2006年5月の日経流通新聞で取り上げられていたものだ。東急電鉄が東京都内で展開している情報発信型店舗「ランキンランキン」(http://www.ranking-ranqueen.net/)では商品分野別の売上順位を前面に打ち出し、上位品だけを陳列している。

そこでこれまで2位以下だった商品が、1位になると売上が突然以前の2倍になるという「法則」があるということだ。これが一面特集記事の隅に小さく載っていた。

しかし、どんなに小さく書いてあっても、見逃しはしない。そして記事は私の心のメモに刻まれる。

問題意識がある、とはそういうものだ。


秘密の情報源なんて無いし要らない。

読み方次第で「マスメディア情報」「一般情報」は幾らもその隠れた価値を示してくれる。

初出:CAREERINQ. 2006/08/01

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